「映画」カテゴリーアーカイブ

映画感想:告白

2010 日本
監督:中島哲也

オススメ度:★★★★★

映画『告白』観ました。
脚本・演技・撮影・編集・音楽の全てが非常に高いレヴェル、オススメ度★5つです。

でも予告が今イチなんですよね、
若干おちゃらけているのかと心配になりましたが
本編は妙なエンターテイメント臭はなく、
淡々とひとつひとつの告白をていねいに追う。

告白の立場が変わることによって同じ映像が違うように見えるのだが
そのことに違和感を感じさせないカメラワークと編集の妙。
決して美しさだけではない、ストーリーに沿って考え抜かれた映像。

映画を効果的に演出し、120分という長さを感じさせない音楽。
音響効果も映画館で体験してよかったと思わせる緻密なエフェクトワーク。

主演の松たか子の演技力はもちろんすばらしいですが
無名の中学生をオーディションしたという37人の生徒の演技にも一切妥協はありません。

これはデジタルフィルム時代の映画というエンターテイメントのひとつの到達点に違いない。
すばらしい映画を観られる国に住んでいたことを感謝したい、名作でした。

映画感想:腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

2007 日本
監督:吉田大八

評価:★★★☆☆

完全にタイトルのキャッチーさに釣られて観た映画。女優志望だけど才能のまるでない、しかし大女優だと思い込んでいる勘違いがイタイ姉と、漫画の才能を持ちながらも家族をネタにしてしまったことがばれて、表向き漫画を書くことを封印し、姉からのいじめに耐える妹。さらに姉に全く頭が上がらないのに妻にはつらくあたる兄に、純朴すぎる振る舞いがおかしな兄嫁。キャラ設定からしてネジが飛んでいる。

両親の交通事故死からはじまるこの映画は、姉妹間の執拗ないじめや夫婦間のどなりあいなど、観ていて苦しいシーンの連続。ラストまでみても救いらしき救いはない。これだけ痛い映画を、観る人を飽きさせず、しかし淡々と描ききった監督の手腕はすごい。そして…最後のバスのシーンは、2時間観たかいがあったと思えるラストだと思う。助け合えず、寄り添えず、でも分ち難くつながっている、悲しみの愛。個人的には好きだけど、人に勧めるには勇気がいるので★3つ評価で。

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映画感想:チャーリーとチョコレート工場

2005 アメリカ 原題:Charlie and the Chocolate Factory
監督:ティム・バートン

評価:★★★☆☆

世界的に有名なロアルド・ダールの同名児童文学の映画化。幼い頃、この本が大好きで繰り返し読んでいたので気になっていた映画。なんで劇場いかなかったんだっけ…

主人公の少年チャーリーの家庭は貧乏で、チョコレートは1年に1回、誕生日プレゼントでしか食べられない。しかし、チャーリーは世界一の変わりもので秘密主義者で天才お菓子クリエイターなウォンカの工場にほど近いところに住んでいて、誕生日以外はチョコレートの香りだけで我慢しているのだ。

そんなある日、ウォンカは5人の子供を、誰にも公開したことがない自分の工場に招待すると発表する。その方法は、ウォンカ製のチョコレートに招待券を紛れ込ませると言うもの。

招待券を手にする幸運をめぐってチョコレートが飛ぶように売れるなか、チャーリーの誕生日がやってくる。1年にたった1枚のチョコレートに、果たして幸運のチケットは入っているのか…?

というのが物語の始まり部分。この時点で子供心は大いに踊り、釘付けになったものです。映画でもチャーリーの貧乏っぷりが嫌みなく、ファンタジー映画らしく描かれていてとてもいい。

しかし映画の主演はジョニー・デップ演じるウォンカ。原作ではあくまでチャーリーが主役なので、困った脚本家は「なんかウォンカにもエピソードを足さなきゃ」と思って、歯科医の父親にお菓子を禁止されていた過去を作っちゃう。

その辺から、歪んだウォンカと父親の関係の修復にチャーリーが一役買うみたいな流れになって、原作から外れて来て、あれれ…?となってしまう。とはいえ、原作ではチャーリーが特別いい子かというと単におとなしいだけの子供のような気もするし、映画的にはキビシイと思ったのか…?

原作に思い入れが強すぎると納得できない映画かもしれない。面白かったけどね。同じくジョニー・デップを目立たせざるを得ないアリス・イン・ワンダーランドが心配だ…

とはいえ、ウォンカのエレベーターが映画で見られたから満足さ!

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映画感想:百万円と苦虫女

2008 日本
監督:タナダユキ

評価:★★★★☆

さわやかな映画。キャッチーなタイトルはよく内容を表しているし、ストーリーはテンポ良く進んでいくし、何と言っても終わり方が大好きだ。ラストシーンが逆のパターンだったら「この2時間を返せ!」と憤慨するところだが、いい方向に期待が裏切られ、主人公が大好きになった。2時間観てしみじみ良かったなぁと思う映画はなかなかない。音楽がよければ★5つなんだけどなぁ。DVD購入決定です。

まぁこれで感想を終わってもいいくらいだが、少し内容を補足。蒼井優演じる主人公の鈴子は、流されやすい性格でこれと言った特徴もない女の子。自分のことより他人のために怒るタイプなんだろうなぁ…。捨てられていた子ねこを助けたのに、同居人に子ねこを再び捨てられ、道路脇で冷たくなっていたのを見た腹いせに行なった復讐がもとで、前科持ちになってしまう。事情聴取中の「ヤっときゃよかった…」は名ゼリフw

そんなこんなで町にいづらくなった鈴子は、百万円を貯めて家を出ることを決意。百万円が貯まるたびに違う土地に移り、誰とも関わらずに生きていくつもりだった。とはいえ、行く先々で人とのふれあいがあり、ある地方都市で恋に落ちる…というストーリー。

その恋の結末はぜひ映画を見てほしいし、その結末でタナダユキ監督すげー!と感動したのだが、蒼井優の魅力もこの映画で初めて発見。冒頭、釈放された鈴子が空を見上げ「シャバ、かぁ…」とつぶやき(ここのカメラワークもいい!)、塀の側を「シャバダバシャバダバ〜…」と歌いながら歩くさまからして絵になる。

あと、お姉ちゃん役もハマってました。とてもほほえましくて。

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映画感想:シッコ

2007 アメリカ 原題:SiCKO
監督:マイケル・ムーア

評価:★★★★☆

マイケル・ムーア監督の映画は、単なるドキュメンタリーではなく、観終わったあとに「ああ、いい映画だったなぁ」と思わせるのがいいところ。本作でも、911で健康被害を負いながら充分な補償が受けられず、高額な治療費に苦しむ元隊員をムーアがキューバに連れて行き、現地の消防隊員とふれあう場面などは感動する。

しかし、アメリカの医療問題に対する切れ味はちょっと鈍いかも。映画を通して主張しているのは、アメリカ以外の国は医療費が安いし自由に治療できる、でも社会主義なんかじゃないよ、というだけだ。政治家と業界の癒着を分かりやすく暴いたのは見事だが、たぶんもっと根深い問題があると思うんだけど…

とはいえ、アメリカ人に取ってそれほどまでに社会主義とは恐ろしいものなんだな、と実感。そして、この映画に日本が一切出ていなかったことの意味も考えよう。言うまでもなく、映画に出て来た他の国に比べ、悪名高いアメリカの医療制度に近いからだ…。

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