Twitterとリアルタイムウェブがもたらす、新しい音楽の可能性の予感


かつてJ.ケージはピアニストが1音も奏でないピアノ曲「4分33秒」を作曲した。これは、作曲家が与え、聴衆が受け取る関係を変えようとした試みだと言えると思う。能動的な聴取によって、作曲家が何も為さずとも、そこに音楽は在る。ケージが呈示した「無音」の音楽は、作曲家の存在を後退させてみせた、更に言えば作曲家を殺して見せた、その極北として、歴史に刻み込まれた。しかし、一方では、そのピアノ曲の初演はコンサートホールと言う、音楽を聴取するために作られた、世界から隔絶された空間で行われた。

という調子で語りだすと超・長くなってしまうので大幅に端折るが、とにかくその後、作曲家と聴衆との関係の破壊(もしくは再構築)は、様々な手段によって行われてきた。それこそ、本当にさまざまに。だから、「聴衆が参加する音楽」の可能性は十分検討されてきたし、僕がここで語ろうとしている「世界中の誰でもが参加できる音楽」についても、すでに先行事例はある。浅学のため坂本龍一と岩井俊雄のコラボレーション[1]以外に実例を知らないが、おそらくたくさんあるだろう。ただし、「世界中の誰でもが参加できる音楽」の実現にはあまりにも、技術的な障壁が高すぎた。個人がそのような大それた音楽に手を出すのは、夢のような話であった。

だからこそ、Twitterがもたらしたリアルタイム・ウェブ[2]のインフラが、その状況を変えつつある[3]ということに、僕は興奮を禁じ得ない!

すでにTwitterは、人間同士が自然言語をやり取りする以上のことに使われ始めている。botに向かってコマンドをつぶやくことで、占いの診断結果が返ってきたり自分のプロフィール画像にサンタの帽子をかぶせたりするサービスはすでに存在する。そもそも、botと会話したり、botのつぶやきをふぁぼったりする世界だ。メッセージの内容は自由だし、コミュニケーションの内容も自由だ。だとしたら、音楽家は、音楽を奏でるメッセージをやりとりしたいと願う、当然ではないか!?

2009年12月11日、日本時間の23時から24時くらいまでの間、僕はTwitterから「世界中の誰でもが参加できる音楽」の実験を行った。Twitterから音楽をコントロールする、技術的なテストの意味合いが強かったので、音楽的には、遠隔でピアノの鍵盤を押せるというだけのことであった。
具体的には、Twitterに投稿するメッセージによって、どの鍵盤の音を、どんな音量で鳴らしたいか、というリクエストを僕のマシンで受け付け、その音をUSTREAM上でストリーミング配信した

結果、事前に何の告知もしていなかったにもかかわらず(もちろん、SuperColliderユーザーの間では世界的な知名度のあるtn8=Craftwifeの呼び掛けがあったにせよ)、7人のユーザーがTwitterのタイムラインを介して、たどたどしく、音を奏であった。これは実に刺激的な体験だった!

その実際のログが、Twitterのデータベースに残っている。
http://twitter.com/#search?q=%23twitterLive1

おそらく音楽家にとって、このように誰でも気軽に参加できる音楽をデザインすることはますます簡単になると思う。そこでは、どのようなコントロールが可能なのか。参加者にどのような自由を与えるのか、または自由を制限するのか。音楽からのレスポンスは誰がどんなコントロールを行ったのかがすぐ分かるものなのか、または不可解で難解な振る舞いをするのか。こう言ったさじ加減が音楽家の仕事となるのである。


[1] 実際に観ていないのですが、下記の記事が参考になります。
http://www.ntticc.or.jp/pub/ic_mag/ic020/intercity/asada_J.html

[2] Twitterのリアルタイム・ウェブ的な社会的インパクトの大きさは、Twitterのヘビーユーザーとして有名な津田大介氏のTwitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流に詳しい。

[3] 実際には、Twitterと同じくらい、OpenSoundControlの存在は大きなものであると言っていいだろう。実際に僕はIC2006(インターカレッジ・コンピュータ音楽コンサート)にて、LANで接続された3台のMacから、OSCによって同時にひとつの音楽をコントロールするソフトウェアを発表している。演奏者の3人がチャットでトークしながら、何の事前打合せもなく、てんでバラバラに音楽をコントロールすることの楽しさと興奮は、おそらく観客席には伝わらなかったであろう。舞台上の我々だけが楽しんでいた。これも演奏と聴取の関係の倒錯である!
当時のレポートを旧ブログに載せているので、お時間のある方はぜひ。
IC2006レポート:「第3の道」でもない方向とは。

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