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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet
著:桜庭一樹 角川文庫

不思議な小説です。
読み終えると、ずっと前からこの物語のことを好きだった、そんな気がしてくる。

僕の好きなマンガであるところの
エログロナンセンスで下品で暴力的な「東京赤ずきん」から
Amazonの関連商品を流れ流れてたどり着いた様に思う、
この気になるタイトルの小説。
小説のすごみ、小説ならではの面白さを見せつけてくれる、
良い小説だったのでちょっと紹介しようと思う。

主人公は中学2年生の海野藻屑
同じく中2の山田なぎさ、2人の少女。

海野藻屑(うみのもくず)というすごい名前の少女はかなりの変人。
なぎさの通う中学に転校した初日に、
「ぼくはですね、人魚なんです」
と宣言する。まぁこれは涼宮ハルヒの憂鬱っぽい出だし。

藻屑は青白い肌に大きな瞳、長い睫毛。要するに美少女。
なぎさは中2にしてリアリストで、ウサギ小屋の世話が日課。
この2人の少女が心を通わせるという設定は
なんだか「つぐみ」を彷彿とさせる。

しかしそのどちらとも決定的に違うのは、
美少女・藻屑が殺されるという結末が1ページ目で呈示されていることだ。
そう、これは悲劇。主人公は殺される運命にある。

藻屑の変な名前っぷりに輪をかけて変な言動。
奇人っぷりに振り回されるなぎさ。
1ページ目の前提を忘れ、ついついファンタジーとして読み進めてしまう。
しかし、徐々に明らかになる真実は、すべてが終着点へと収束し、
あらゆる虚構はリアルへと変わり、藻屑の死へとひた走る。
この疾走感はすごい。

例えて言うなら、中距離走、800m走。
連載という制限があるマンガだと、どうしても
絵の魅力で数ページの見せ所を作る短距離走の積み重ねになるか、
長い連載でじわじわと世界観を作っていく長距離走になることが多い。
しかし良い小説は中距離走。
最初から突っ走り、休む間もなくページは進み、
終わりの方は頭がしびれ、それでも
ページをめくる手を止めることができない。
そんな感じ。

しかし、読後感は不思議に心が洗われたという感じです。
絶望ではないし、どちらかと言えば希望に近い。
もちろん、主人公が死んでお涙ちょうだい系では絶対にありません。
残された主人公のなぎさが何を思うか。
ぜひ小説を読んで確かめてもらいたい作品です。

おかしな初期設定が最初はコミカルで、
次第に救いのないリアルへと帰着するという意味では
やはり大好きなとらドラに近いかもなぁ。